※ 教室生限定で公開している記事です。
そろばんデータポータルのレポートで分類されている「間違い方パターン」は、データ解析を行うにあたり、かじつそろばん教室が独自に定義したものです。
十段・日本一で指導経験豊富な先生が、答案のどこを見るのか、その傾向に応じてどう指導するのかといった、指導ノウハウを凝縮したものとなっています。
この記事では、それぞれのパターンの内容と、そのパターンが強く出ているときの練習方法などについて、詳細に解説していきます。
そろばんデータポータルそのものについては、以下の記事からご覧ください。
はじめに
解説をご覧いただくにあたり、3点ほどご認識いただきたいことがございます。
- 分析の目的は、そろばんの上達である
- 間違い方パターンの判定は、完全ではない
- 間違い方パターンの分類は、今後も改善していく
以下、順にご説明します。
分析の目的は、そろばんの上達である
レポートを見るときには、どうしても間違い方パターンの多いところ=できていないところに目が行きがちです。
しかしながら、レポートや分析は、お子様のそろばんの上達のためのツールであり、非難したり、弱点をあげつらうためのものではありません。
生徒のみなさんには、うまくなるためのヒントをつかもう、という気持ちでレポートを見たり、先生の話を聞いてほしいと思います。
また、保護者のみなさまには、ぜひそれを後押しするような声かけをしていただけますと、大変ありがたいなと思います。
できているところをまずほめ、その上で、「今克服すべきことは何なのか」を冷静に確認して伝えてあげてください。
間違い方パターンの判定は、完全ではない
間違い方パターンは、プリントに書かれた数字(誤答)と、正しい答えの差を見て、「この差ならこうだろう」と推察して判定しています。
そのため、誤答の一問一問全てが、確実にそのパターンであるという保証は、残念ながらできません。
しかしながら、高段位の指導者が推察するため、判定の精度はとても高いといえます。
さらに、データが蓄積されるほど判定の信頼性が高まるため、どのパターンの傾向が強いかは読み取りやすくなっていきます。
レポートの解析結果は、上達に向けた気づきを促すためのツールであることをご理解いただけますと幸いです。
間違い方パターンの分類は、今後も改善していく
冒頭のとおり、間違い方パターンの分類は、データ解析にあたり新たに定義したものです。
今後、実際の解析や指導者間の議論を重ねていくなかで、新たな知見が得られる可能性は十分にあります。
より効果的な指導につながるよう、間違い方パターンの分類は適宜見直して、そろばんデータポータルの質を継続的に高めていきます。
それでは、前置きは以上として、以下で具体的な内容を解説します。
各パターンについて、パターンの内容説明→実際の誤答例→練習方法、注意点の順に記載します。
かけざん
パターン一覧
- たしざんミス
- 九九変換ミス
- かける数ミス
- かける数飛ばし
- 桁の理解不足
- 位取りミス_0関係
- 位取りミス_が 等
たしざんミス
数字をたしていく過程で計算を間違えてしまうパターンです。
例
26×24=634
(正答:624)
十の位が1違っています。
九九の変換やかける数には誤りはなさそうなので、たしざんを間違えてしまったと考えられます。
練習方法、注意点
運珠(うんしゅ、珠をはじくルール)や指づかいに間違ったクセがついている可能性があります。
少しスピードを落として、ていねいにはじく練習をして、正答率を上げていきましょう。
みとりざんの練習を多くするのも有効です。
九九変換ミス
誤った九九をたしてしまうパターンです。
(このパターンが多くても、必ずしも九九を覚えていないわけではありません)
例
93×63=5,829
(正答:5,859)
正答と3違いで、問題に3があるので、3の段の九九を間違えたと考えられます。
(9×3=24としたか、3×6=15としたか。)
練習方法、注意点
時間をはかってプリントを解くと、意外とあせってしまうものです。
九九をより正確に、よりすばやく言えるように練習しましょう。
かけざんを解くときは、九九をしっかり思い浮かべてからそろばんに置くようにしましょう。
かける数ミス
本来かけるべきではない数同士をかけてしまうパターンです。
例
74×71=5,257
(正答:5,254)
最後、4×1をたすところを、7×1をたしてしまったと考えられます。
練習方法、注意点
テキストやYouTubeの動画を確認して、かける順番をもう一度確認してみましょう。
かけざんを解くときは、「今どの数をかけているか」を強く意識しながら計算を進めましょう。
かける数飛ばし
本来かけるべき数を飛ばして計算を終わりにしてしまうパターンです。
例
36×41=1,470
(正答:1,476)
最後、6×1をたすところを、計算をせずに終わりにしてしまったと考えられます。
練習方法、注意点
テキストやYouTubeの動画を確認して、かける順番をもう一度確認してみましょう。
九九をたす回数が本来より少ないことに気づけば防げるミスのため、集中力が低下していた可能性があります。
はじめは制限時間7分を一気にはからなくても良いので、一問一問集中して問題を解く練習をしてみましょう。
桁の理解不足
正解の桁(ケタ)数とは異なる桁の答えを書いてしまうパターンです。
例
28×30=8,400
(正答:840)
計算は正しくできたものの、2桁×2桁=4桁と思い込み、1桁ずらして書いてしまったと考えられます。
練習方法、注意点
テキストやYouTubeの動画を確認して、かけざんの答えの桁の決まり方をもう一度確認してみましょう。
答えを書く前に、「この桁で本当に合っているのか?」を確認するクセをつけるのも、間違いを防ぐのに効果的です。
位取りミス_0関係
数字に0が入っている問題で、0の直後に数字を置く位(くらい)を間違えてしまうパターンです。
例
309×7=2,730
(正答:2,163)
3×7=21の後、0×7=0の分をあけて、1つ右の位に9×7=63を置くべきところを、本来よりも1つ左の位に63を置いてしまったと考えられます。
練習方法、注意点
「0も1つの数字である」という概念は、とてもつかみにくいものですが、正確な計算には欠かせないものです。
0も1つの数字として0の段の九九をとなえて、そろばんでは何もしないけれど「0を置く」という意識を強く持つようにしましょう。
位取りミス_が 等
上の「位取りミス_0関係」以外のパターンで、数字を置く位(くらい)を間違えてしまうパターンです。
(数字に0が入っていても、こちらに分類されることもあります)
例
512×6=3,612
(正答:3,072)
5×6=30の後、1×6=06を「60」として、本来よりも1つ左の位に6を置いてしまったと考えられます。
練習方法、注意点
このミスは、九九に「が」(答えが1桁の九九)や「●0」(4×5=20や5×6=30など)といった、九九の答えが1つの数字のみになるときによく起こります。
「が」が出てきたら、「0●」と0を強く意識して、その数字を置く位を間違えないようにしましょう。
「●0」が出てきたら、0を置いたことを強く意識して、次の数字を置く位を間違えないようにしましょう。
わりざん
パターン一覧
- ひきざんミス
- 九九変換ミス
- かける数ミス
- 桁の理解不足
- 位取りミス_0関係
- 位取りミス_が 等
- もどし算警戒
- 書き直し(もどし算)
ひきざんミス
数字をひいていく過程で計算を間違えてしまうパターンです。
例
2,736÷57=41
(正答:48)
まず最初に4を立てて、4×57=228を引きますが、
本来2,736ー2,280=「456」となるところを、ひきざんを誤って「56」になってしまい、
次の答えに強引に1を立てて計算を終わりにした、と考えられます。
練習方法、注意点
運珠(うんしゅ、珠をはじくルール)や指づかいに間違ったクセがついている可能性があります。
少しスピードを落として、ていねいにはじく練習をして、正答率を上げていきましょう。
また、このミスの場合、途中で強引に割り切っているので、わる数と答えの一の位をかけても、わられる数の一の位にならない、という特徴があります。
(上の例の場合、7×1=7で、6にならない)
書いた答えとわる数の一の位の九九が、わられる数の一の位と合っているか、さっと確認してから次の問題に進む、というのも有効です。
九九変換ミス
間違えた九九を答えに置いているパターンです。
例
3,776÷8=482
(正答:472)
答えに7が立つ、ということはわかっていて、7×8=56をひきながら、そろばんには8を置いて誤答になった、と考えられます。
練習方法、注意点
時間をはかってプリントを解くと、意外とあせってしまうものです。
九九をより正確に、よりすばやく言えるように練習しましょう。
わりざんを解くときは、九九をしっかり思い浮かべてからそろばんに置くようにしましょう。
かける数ミス
本来かけるべきではない数同士をかけてしまうパターンです。
例
3,804÷6=951
(正答:634)
「÷6」なので「6×何か」で答えを置いていくべきところを、見間違えて「÷4」で計算してしまったと考えられます。
練習方法、注意点
テキストやYouTubeの動画を確認して、かける順番をもう一度確認してみましょう。
また、計算中はわる数をしっかり意識すること(特に、同じ数が続いたり0が入ったりするとき)が大切です。
桁の理解不足
正解の桁(ケタ)数とは異なる桁の答えを書いてしまうパターンです。
例
4,080÷12=34
(正答:340)
計算は正しくできたものの、4桁÷2桁=2桁と思い込み、1桁ずらして書いてしまったと考えられます。
練習方法、注意点
テキストやYouTubeの動画を確認して、わりざんの答えの桁の決まり方をもう一度確認してみましょう。
答えを書く前に、「この桁で本当に合っているのか?」を確認するクセをつけるのも、間違いを防ぐのに効果的です。
位取りミス_0関係
わる数または答えに0が入っている問題で、0の直後に、数字をひく位(くらい)や答えを置く位を間違えてしまうパターンです。
例
2,163÷7=390
(正答:309)
答えの3を置いた後、0を置いて(1つ飛ばして)から9を置くところ、0を無視して、3のすぐ右隣に9を置いてしまったと考えられます。
なお、この例では「39」という答えもよくあります。この場合、「桁の理解不足」にも同時に分類されます。
練習方法、注意点
「0も1つの数字である」という概念は、とてもつかみにくいものですが、正確な計算には欠かせないものです。
0も1つの数字として0の段の九九をとなえて、そろばんでは何もしないけれど「0を答えに立てる」という意識を強く持つようにしましょう。
位取りミス_が 等
上の「位取りミス_0関係」以外のパターンで、数字をひく位(くらい)や答えを置く位を間違えてしまうパターンです。
(わる数または答えに0が入っていても、こちらに分類されることもあります)
例
2,418÷62=32
(正答:39)
答えに3を置いて、3×6=18をひいた後、3×2=06は十の位からひくのが正しいのですが、
誤って百の位からひいてしまったため「18」しか残らず、無理やり2を立てて計算を進めていったと考えられます。
練習方法、注意点
このミスは、九九に「が」(答えが1桁の九九)や「●0」(4×5=20や5×6=30など)といった、九九の答えが1つの数字のみになるときによく起こります。
「が」が出てきたら、「0●」と0を強く意識して、その数字をひく位を間違えないようにしましょう。
「●0」が出てきたら、0をひいたことを強く意識して、次の数字をひく位を間違えないようにしましょう。
また、このミスの場合、途中で強引に割り切っているので、わる数と答えの一の位をかけても、わられる数の一の位にならない、という特徴があります。
(上の例の場合、2×2=4で、8にならない)
書いた答えとわる数の一の位の九九が、わられる数の一の位と合っているか、さっと確認してから次の問題に進む、というのも有効です。
もどし算警戒
もどし算を警戒するあまり、正しい答えよりも小さい数字を立てて、そのまま計算してしまうパターンです。
例
2,030÷29=61
(正答:70)
本来は7を置けるにもかかわらず、警戒して6を置いてしまい、290が残った結果、次の位に1と置いてしまったと考えられます。
(その1は、誤って置いた6の位に置くべきもの)
練習方法、注意点
テキストやYouTubeの動画を確認して、もどし算のやり方をもう一度確認してみましょう。
その上で、もどし算を警戒したりめんどうがったりせず、大きな数字からひけるか試していくことを徹底しましょう。
書き直し(もどし算)
もどし算がある問題で、試した数字を先にプリントに書いてしまい、それを後で訂正しているパターンです。
これは誤答ではありませんが、もどし算としては効率の良くないやり方のため、カウントしています。
例
2,030÷29=8 70
まずは8を試すところは良いのですが、それをエンピツで書く必要はありません。
練習方法、注意点
最後まで計算が終わってから答えを書くクセをつけましょう。
みとりざん
パターン一覧
- たしひきミス
- 同じ数字を二度計算
- 数字を飛ばす
- +と-を逆に計算
- ずれた桁で計算
たしひきミス
数字をたしひきする過程で計算を間違えてしまうパターンです。
誤答の例
正答:123
誤答:124
1違いや5違いなどであり、運珠(うんしゅ、珠をはじくルール)を間違えたと考えられます。
練習方法、注意点
この間違いパターンは、みとりざんの間違いとしてはある意味当たり前であり、レベルが上がっても完全になくすことはむずかしいものです。
少しスピードを落として、ていねいにはじく練習をして、正答率を上げていきましょう。
正答率が上がってきたら、またスピードを上げて解ける題数を増やして、正答率が落ちたらまた丁寧に…
これを繰り返して、少しずつ、でも確実にじょうずになっていきましょう!
同じ数字を二度計算
同じ数字を二度たしひきしてしまうパターンです。
誤答の例
正答:123
誤答:187
問題中に「ー64」がある
練習方法、注意点
このパターンは、運珠(うんしゅ、珠をはじくルール)の技術とは無関係なところがポイントです。
そろばんを手前にずらす動きを徹底する、問題の長さに関する違和感など、計算そのもの以外にも集中するようにしましょう。
数字を飛ばす
途中や最後の数字を飛ばして計算してしまうパターンです。
誤答の例
正答:123
誤答:187
問題中に「64」がある
練習方法、注意点
このパターンは、運珠(うんしゅ、珠をはじくルール)の技術とは無関係なところがポイントです。
そろばんを手前にずらす動きを徹底する、問題の長さに関する違和感など、運珠以外にも集中するようにしましょう。
+と-を逆に計算
たすべき数字をひいてしまう、または、ひくべき数字をたしてしまうパターンです。
誤答の例
正答:187
誤答:123
問題中に「ー32」がある
(ー32を+32と計算すると、答えは64ずれます)
練習方法、注意点
このパターンのミスを減らすためには、マイナスの記号に注意を払うことに尽きます。
まずは、このようなミスが多いことを自覚することが大切です。
(なかなか自分では気づけません)
その上で、ひきざんの問題はスピードを落とし、マイナスの記号を意識しながらはじいていきましょう。
ずれた桁で計算
本来の桁(ケタ)ではなく、ずれた桁にたしひきしてしまうパターンです。
誤答の例
正答:177
誤答:123
問題中に「60」がある
(+60を+6と計算すると、答えは54ずれます)
練習方法、注意点
問題に出てくる数字の並び順、そのときのそろばんに置かれている数字の状況によって、ずれた桁に置きやすくなることはあります。
それらに惑わされず、1つの数字ごとに、答えの置き始めの位置に気を配るようにしましょう。
また、問題のすぐ下で計算することも、桁をずらさないための工夫としてとても有効です。
さらに、答えを書くときに一の位(定位点)を意識することで、0のつけ忘れも防止することができます。
各種目共通
パターン一覧
- 縦の珠の読み間違い
- 隣の数に引きずられる
- 字バツ
- 特定不可
縦の珠の読み間違い
正しく計算はできたものの、1だまと5だまを読み間違えて転記してしまうパターンです。
例
93×103=9,179
(正答:9,579)
百の位が4ずれる要素がなく、運珠を間違えた可能性も低いため、5を1と読み間違ったと考えられます。
練習方法、注意点
そろばんをはじくときの集中力にくらべて、答えを書くときの集中力は低くなりがちです。
答えを書くときも集中を切らさず、また焦らないように、しっかり答えを書きましょう。
隣の数に引きずられる
答えに同じ数が続く場合など、そろばんから間違えて転記してしまうパターンです。
誤答の例
正答:144,400
誤答:144,440
練習方法、注意点
そろばんをはじくときの集中力にくらべて、答えを書くときの集中力は低くなりがちです。
答えを書くときも集中を切らさず、また焦らないように、しっかり答えを書きましょう。
字バツ
字が汚くて読み取れないパターンや、コンマや小数点を書き忘れのパターンです。
練習方法、注意点
正しく計算できているのに、字バツで点数が取れないのはとてももったいないことです。
少し時間がかかっても良いので、読める字でていねいに書きましょう。
特定不可
ここまでのいずれにも当てはまらず、推察もできない誤答は、このパターンに分類します。
原則としてここに分類することはありませんが、このパターンの件数があまりに多く、疑問に思われた場合は、教室までお問い合わせください。
おわりに
いかがでしたでしょうか。
同じ「間違い」でも、実に様々なパターンがあることがお分かりいただけたかと思います。
そろばんの計算は、必ず正解があるものです。
その計算を間違えるということは、必ずなんらかの原因があります。
原因を「パターン」として分類し、
生徒一人ひとりの間違い方パターンの傾向を分析し、
そのパターンごとに対策を打って原因をなくしていく、
この繰り返しこそが、最大効率で技術を習得する方法だと、我々は考えています。
ただ、当然ながら、データ解析しただけで、そろばんがじょうずになるわけではありません。
教室では、データ解析の結果にくわえて、データ解析だけでは把握しきれないお子様の様子もよく見ながら、
より早く、より確実に実力を向上していけるよう、ていねいに指導していきます。